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約4千人を熱狂させた全島一決定戦(左:徳之島台風)=3日、伊仙闘牛場
平成22年1月4日(月)
熱戦満喫 新春闘牛大会「徳之島台風」3度目の防衛  
新春闘牛大会が元旦から開幕し、闘牛ファンや帰省客らが連日、熱戦に満喫。 3日、伊仙闘牛場で開催された「全島一・中量級優勝旗争奪戦伊仙大会」では、「全島一」の称号を懸け、王者「徳之島台風」に「勇大」が挑戦、10分16秒で王者が3度目の防衛を果たした。
中量級は、王者「基山大宝」が挑戦者「荒龍和真号」を6分59秒で退け、初防衛に成功した。


【闘牛リポート】 リポーター:ジョンマこと保岡達也さん
1月3日「全島一・中量級優勝旗争奪戦」IN 伊仙闘牛場
全島一(無差別級)
チャンピオン 徳之島台風号 VS チャレンジャー 勇大号
 今や不動の王者、目手久の徳之島台風号は今回が3度目の防衛戦。体重は1050㎏と、近頃の横綱クラスでは決して大きくない体格ながら柔軟性に富み、伝家の宝刀「首持たせ」で相手の攻撃を凌ぐと同時に相手のスタミナをも奪い、最後は相手の出鼻をカウンター一発、返し速攻で勝負を決めるや容赦ない追撃で相手の戦意を完全に削ぎ取る。近年希少な頭脳派全島一王者。
 対するは井之川の勇大号。対戦数こそ少ないが目下2連勝中。体重は何と1,200㎏を超えるらしく、そのパワーは計り知れない。
 先入れは王者徳之島台風号、黒に金飾りのガウンを背に威風堂々の入場。 速攻牛らしい胴長な体躯、この牛の象徴ともいえるカブラ角は針の様に研ぎすまされていることが遠くからも見てとれる。余裕綽々で相手を待つ。 王者に遅れること数分、下り坂になっている花道を挑戦者がその巨体を揺すって走り込んで来た勢いもそのまま、仕切る間もなく「さぁ対戦開始!」観客が両牛の体格差に気付くのが早いか、怒濤の押し込みは挑戦者、迎え撃つ王者も上手く体を入れ替えて防ぎ、間髪入れずの返し速攻! 目まぐるしい腹の取り合いは柔軟性とスピードに優る王者優勢。一気に柵へ持って行きたいが、巨大な相手ゆえ寸でのところで止められる。常に下から攻める王者に巨体を浴びせかけ凌ぐ挑戦者。王者にとってこれまでとは逆のパターンだろうか。一気に跳ね上げ押し込みたいが、200㎏近い体重差は重すぎる。挑戦者が完全に横向の体勢になっても肩で寄っかかられるだけで押し込めない。この間、挑戦者もなんとか体勢を立て直そうともがくが、王者が常に下から圧力をかけてそうさせない。 押しくらまんじゅうでは勝機は無い「こりゃダメだ」、挑戦者が若干飽きたところにへ王者渾身の腹とりが決まった。逃げまどう挑戦者を容赦無く追撃する王者、勢子が押さえて勝負有り!10分16秒、王者徳之島台風号、見事3度目の防衛なる。

中量級(980㎏以下級)
チャンピオン 基山大宝号 VS チャレンジャー 荒龍和真号
 沖縄の名牛戦闘シャネルの三男坊、崎原の基山大宝は昨年10月大会で新王者に就き、今大会が初防衛戦ではあるが、これまでの勝ちっぷりから、その実力は全島一クラスにも引けをとらないとの前評判。挑むは東京の荒龍和真号。戦歴こそ浅いものの体躯充実、相手探しに苦慮する基山号への挑戦は千載一遇のチャンスともいえよう。
 先入れの荒龍和真号はリング中央で身構え迎撃準備完了。 「基山牛は大変気性が荒うございます。入場の際は入口付近を広く空けて下さい!事故が起きても主催者は責任を負いません・・・」等と必至なアナウンスが響く。「ナァカチ/フェラムン!」(伊仙グチで「中へ入らんか!」)主催関係者は入口付近の観客整理に必至。 ワイド・ワイドッ!のティマイに遅れること約10分、鼻綱を長く張られたチャンピオンが駆け込んで来た!「ハイ行ケッ!」両牛勢子の掛け声一発、いざ勝負っ! 早々、チャンピオン怒濤の腹とり速攻炸裂! なんとか回り込み応戦する挑戦者。聞きしに勝る荒技チャンピオン。荒龍和真号は防戦一方と見てとれたが、簡単には決まらない。返し速攻が決まれば挑戦者にも勝機は十分有る。朝から小雨が続き、リング東側の一角には水溜まりができ、近くの観客も激しい泥攻撃に傘で応戦。そんな中、チャンピオン一気の速攻に水溜まり側のリングに貼り付けられた挑戦者。腹部に勝負を決定づける一撃を見舞うチャンピオン、堪らずその場に尻餅をつく挑戦者、勝負有りと思いきや、再び立ち上がって闘う挑戦者に場内からは大きな歓声と声援、だがその数十秒後だった。挑戦者自ら突然ドタッっと倒れ込んだ。先ほどのダメージが酷かったのだろう。勢子師達が必至でチャンピオンを抑えるも、挑戦者起きあがれずゴロンとなったまま勝負有り!6分59秒。「はいキムチャゲーハ」、かの名牛南郷牛の最後の姿がよぎる。だが、暫くして自力で立ち上がると、ヨタヨタと歩きばしめ安堵した。その後も幾度かへたり込みながら闘牛場を後にした荒龍和真号、その復活を切に祈ります。圧倒的な力を見せつけ初防衛を果たした基山大宝号、この牛に台頭してくる猛者がはたしているのだろうか。
 悲喜こもごも、見応えのある全島一・中量級大会。素晴らしいナクサミに感謝しつつ、島を後にしました。