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英語セミナー行なう牧野教授 

セミナーに参加した奄美市小・中学校の先生たち

平成22年8月18日(水)
小学校の英語教育について 牧野三佐男(南オレゴン大学教育学部客員教授
はじめに
2011(平成23年)から新学習指導要領の実施で公立小学校の5・6年生で週1時間、年間35時間の「外国語活動」が必須になります。
2009年度と2010年度は移行期間で、すでに全国の公立小学校の99%が何らかの形で英語の授業をしています。
 
 先般、奄美市教育委員会主催の小・中学校の先生を対象に「小学校英語教育の必修化にどう対応すべきか」と題して奄美文化センターで英語教授法と実践のセミナーを2時間行なった。すでに一部先取りする形で、4月の新学期から97.8%の公立小学校が5・6年生で外国語活動を実質的にはじめており文科省は教員に対する英語研修を進める一方、全国の小学校に教材となる「英語ノート」を配布していますが、教員の不安を解消するためにも、ALT(英語を教える外国語指導助手)の充実が不可欠と言えるでしょう。その補助教材「英語ノート」の予算が、政府の〔事業仕分け」で廃止になり、全国から困惑の声が殺到している。教科書がない小学校では貴重な教材だけに、校長代表らが同省に〔継続」を直訴、多くの廃止反対意見なども寄せられている。


「日本における小学校英語教育の目的」
 小学校における英語教育の導入の動機となったのが1996年(平成8年)の中央教育審議会の答申です。それによれば、国際化に対応するための教育を推し進めて行く上での重要な点として、次の3点が上げられている。
① 広い視野を持ち、異文化を理解するとともに、これを尊重する態度や異なる文化を持った人々とともに生きて行く資質や能力の育成を図ること。
② 国際理解のためにも、日本人として、また、個人としての自己の確立を図ること。
③ 国際社会において、相手の立場を尊重しつつ、自分の考えや意思を表現できる基礎的な力を育成する観点から、外国語能力の基礎や表現力等のコミュニケーション能力の育成を図ること。
  この答申のうち、特に③では、国際化に対応する教育の一環として外国語能力を育てる事がうたわれており、その目的として「国際社会において、相手の立場を尊重しつつ、自分の考えや意思を表現できる基礎的な力の育成」を目指している事が分かります。この事から、小学校で外国語(英語)にふれさせることの教育的な意義は、ただ単に外国語の運用能力の育成を図るだけでなく、自分と異なる文化の存在を知る事が大切という事になります。そのことで言語やコミュニケーションについて異なる視点からとらえることが可能になり、さらには自国の言語・文化を振り返る事につながって行くのです。
特に小学校では、知識の習得だけでなく、体験的な学習を取り入れることによって、その中で自ら考え、判断し、表現しようとする「コミュニケ-ションへの積極的な態度」を育てる事が強調されます。異なる文化を持つ人とのコミュニケーションについて学び、自分の言語・文化に気ずくことが「個の確立」をうながし、国際感覚を備えた日本人として地位の育成へとつながると考えられているのです。

オレゴンのWALKER SCHOOL  
オーカー小学校1年生のクラス
4年生の音楽の授業

 来年4月から、どの小学校でも高学年(5・6年生)で英語(外国語活動)が始まります。保護者の中には、期待とともに、不安を持っていらしゃるかたも多いのではないでしょうか。実は、学校の先生達にとっても、そうなのです。それほど深刻に考える必要はないかもしれません。小学校英語とは何なのか、改めて整理してみましょう。
  英語は国語、算数、体育などのような「教科」ではありません。教科ではないので、教科書や、教員免許も必要ない、ということになります。ではなぜ、そんな時間を設けたのかというと、これからの国際化時代をにらんで、中学校の前段階でとして「コミュニケーション能力の素地を養う」(小学校指導要領・目標)ことが、〔英語が使える日本人」を育成するために必要だ、と文部科学省は考えたのです。
ですから、小学校の段階では、まずは英語に親しむこと、積極的に英語でコミュニケーションを取ろうとする態度を身につける事が求められます。一言で言えば〔英語好きな子にする」、あるいは「英語嫌いにはしない」ということです。それが、中学校に進んでからの〔教科」の勉強につながるのです。

<参考> 小学校外国語活動サイト(文部科学省)、 小学校学習指導要領(文部科学省)

牧野三佐男
元専修大学文学部英米文学科教授
前目白大学大学院教授 国際教育交流センター長
南オレゴン大学教育学部客員教授
国際教育交流部 副部長 環太平洋担当