昨年11月25日から12月5日までラオス国立大学とカンボジアに渡航した牧野三佐男氏からラオスについて企業進出する時の参考にしてi頂きたいというレポートが届いた。
「ラオス政府の政策決定とどう経済交流すべきかの考察」
オレゴン大学教育学部特任教授 国際教育学博士
牧野三佐男
20年前、タイ、ラオスなど東南アジア研究で有名なフライ博士とラオス国立大学のカリキュラム作成に参加して今回のラオス・カンボジア経済ミッションでラオスを訪問するのは10回目と成る。毎回ビエンチャン都市周辺の発展振りは北部の貧しい集落と比べると驚くばかりである。
ラオスの歴史は、中国南西部で現在の雲南省中心にあった、ナンチャオ王国の支配領域が南下し、この地域に定住者が現れた時代に始まる。現在の政治体系は国家主席を元首とする共和制国家であり、国家主席は国民議会で選出され、任期は5年、職務の補佐・代行のために国家副主席がいる。憲法の前文で「社会主義」「人民民主主義」を明記し、第3条では「ラオス人民革命党を主軸とする政治制度」と規定している、マルクス・レーニン主義を掲げるラオス人民革命党による社会主義国型の一党独裁制(一党制)が敷かれている。政府の政策決定は、9人で構成される党の政治局と、49人で構成される党の中央委員会において決定され特に重要な政策に関しては,さらに大臣の会議で審議される。
行政府の長は首相である。国家主席に指名され、国民会議で承認を受ける。任期は5年、副首相が、3人。各省大臣、省と同格の機関の長により構成される。首相は、副大臣、県副知事、中央直轄市副市長、郡長を任免する権限を持つ。2006年7月、首相と政府を補佐し、閣議を準備し、政府に資料を提供する機関として、政府書記局が設けられた。この様な一党支配の政府機構を考慮にいれてラオス日本大使館の意見等参考に経済交流を考えるべきである。
ラオスは、海と接しない内陸国であり、国土の多くが山岳で占められており、隣国に比べて比較的森林資源が多く残っていた地域であるが、近年急激な森林伐採が問題になっている。国土面積の61%は二次林(2006年)。そして、この森林地帯でも多くの人々が生活している。原生林は、国土面積の6%である。
メコン川周辺には小さな平地が広がっている。メコン川はラオスを貫いて流れており、ミャンマーとタイとの国境をなしている。そのうちタイトの国境の3分の2がメコン川で、東はアンナン山脈の分水嶺が国境をなしている。今後課題としてメコン川を利用した水力発電やいろんな企業進出が考えられる。気候はモンスーンの影響で明瞭な雨期と乾期があり、大まかにいって5月から11月にかけては雨期、乾期がその後4月まで続くのである。
IMFによると、2011年度のラオスのGDPは78億ドルであり鳥取県のおよそ3分の1の経済規模である。国際連合によると基準に基ずき、後発開発途上国と位置ずけられている。2011年にアジア開発銀行が公表した資料によると、一日2ドル未満で暮らす貧困層は国民の60%を超える412万人と推定されている。主要産業である農業に78%の人口が従事しGDPの41%を占めている。海外からの援助や投資により2008年には7.8%の経済成長を実現している。隣国の中国の進出は目覚ましく、官民挙げて中国から業者や労働者がラオスに流入している。2007年には、ビエンチャン中国系の店舗が集まるショッピングモールが出来た。ダム工事など日本が行なっていたインフラ整備にも中国の進出が目覚ましく近い将来中国からの鉄道計画の話しも具体化しておりラオス国民の間には中国に対する好感度と逆にラオス国立大学の教授が話してくれた、「ここのまま中国からの巨大投資が続けば高級役人が得し国は中国の思いのままに成る可能性がある」と言ったのが印象的であった。あらゆる面で価値観の違う国との経済的交流は最善の策で望むべきであると思う。
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