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  羽がカールした蝶  ,
平成20年6月10日(火)         
飛べるのか?カールした蝶 蝶の羽ばたきが嵐を起こすか?  
昼休み、珍しい蝶がいるとの連絡で、カメラ片手に出かけて見た。最初どこが珍し
いのかよく分からなかったがファインダー越しに観察していると羽がカールしてい
るのに気付き、これは珍しいと納得。 羽を広げるとどのようになるのか、又どのよ
うな飛び方をするのか興味が膨らんできた。 50分近く観察していたが足を使って
移動はするが飛んではくれない。 午後の仕事が始まるので結局、飛ぶ姿を見る
ことができなかった。
 一日の仕事が終わり、横になって本を広げていると、東京大学生産技術研究所
教授合原一幸氏の「蝶の羽ばたきが嵐を起こすか?」という題が目に留まり興味
深く読んだ。 「カールした蝶」と関係はないが一部を転載。

●バタフライ効果の発見
蝶は私たちにとって大変身近な存在であるが「蝶効果(バタフライ効果)」と呼ばれ
る科学用語がある。アメリカの気象学者エドワード・ローレンツの研究に由来する。
 ローレンツは、彼が作った気象現象の数学モデルをコンピューターで計算している
時、偶然に「0.506127という数字を0.506で近似すると、その後の解の振る舞
いがまったく異なってしまう」ことを発見した。 ごくわずかな値の違いが、時間ととも
に拡大し、最終的に大きな差を生み出したのだ。 この現象をバタフライ効果と呼ぶ
この語の由来は今となってははっきりしないが、ローレンツ自身の講演のタイトル
「予測可能性:ブラジルの蝶の羽ばたきが、テキサスに竜巻を引き起こすだろうか?」
によるものと言われている。(略)

●カオスの衝撃
 ローレンツが発見したバタフライ効果は、がちがちのラプラス的世界観に強力な一
撃を加えた。 たとえ決定論に従っていても、初期状態がどんなに小さくてもほんの
わずかでもずれると、その後の将来はまったく異なるものとなる。このような決定論
的ダイナミックスは、今では広くカオスと呼ばれている。(略)
 ローレンツはこの現象を発見した際、気象学者であるだけに天気の長期予報は不
可能だと実感したという。ちなみに「バタフライ効果」の含意は、蝶が羽ばたくとわず
かだが風を起こして状態がほんの少し変わる。このわずかな状態変化こそがその
後の将来を大きく変えるとすれば、嵐だって引き起こすかもしれないという意味で
のたとえ話である。
 もちろん実際の気象においてこのようなことが生じるかどうかは不明だし、そうで
はないと考える研究者は多い。 ただし、現在の天気予報は、大気の数学モデルを
コンピュータで数値計算して予報しているが、この天気予報の数学モデルがバタフ
ライ効果を持つことは知られている。 また、電子回路、レーザーといった工学システ
ムならず、神経細胞や循環器系のような生態システムにおいてもバタフライ効果が
確認されている。
 ちなみに、バタフライ効果のたとえ話自体もバタフライ効果を持つようで、ローレン
ツの講演ではブラジルとテキサスだったが、最近では「北京で蝶が羽ばたくと、ニュ
ーヨークで嵐が起きる」などどより大げさなたとえ話になっている。

●歴史上の「もしも」
 バタフライ効果は、「もしもクレオパトラの鼻がもう少し低かったなら、世界の歴史は
違ったものになっていたであろう」といった類の歴史上の「もしも」話を連想させる。
 確かに歴史の時間の流れの中で、節目節目にその後の分岐を生み出すバタフラ
イ効果があるように思える。自分自身の人生を振り返ってもあの時こうしていたらと
悔やむことは多い。ただ、歴史と違ってカオスはエルゴード性という性質によって、元
の状態のいくらでも近くへといつか戻ることができる。
 でも、もしかしたら人生もそうかもしれない。「いつでも元に戻ってやり直せる」、「将
来は予測不能だから楽しい」。  カオスを研究していると、人生をそう考えるようにな
ってくる。
                                      【人間と科学より転載】