ティダマンデの徳之島 Home
過去の検索
集落から2キロほど離れた場所にある「赤田松」
平成20年10月11日(土)
〜山集落の聖地〜赤田松(アーダンマツ)の伝説
徳之島町山集落の西方向の山奥に赤田松(アーダンマツ)と呼ばれる松の
巨木がある。神が宿る木として奉られ、一帯は神高い場所として、草木の乱
獲はもとより足を踏み入れてならない場所として畏怖の念をもって見られて
きた。
今から六代くらい前、この木のそばに若い夫婦が住んでいた。結婚二年目
に珠のように光り輝く美しい女の子が生まれた。 月日が経つにつれて夜は

お月様のように、いやそれ以上に輝く美しさが宿ってきた。あまりの美しさに
父母は神様が授けて下さったのだと云って、その子が四歳にになるまでは
一人で家に置くような事もないほどであった。
子供がちょうど四歳の時の冬、父は山の麓の生活では海の魚を食べること
が少なかったので子供のために釣りに行き、母は父の帰る頃になって熱い
芋でも煮て待っていようと思い、近くの小川に洗いに行きました。
しばらくして帰ってきた母は子供の姿が見えなくなっていることに気付きまし
た。 八方探しても見つかりません。 釣りから帰ってきた父も一緒に血眼にな
り探しましたが見つかりません。あくる日もそのあくる日も探し、夜も寝なない
で探し回ったが見つかりません。こうして一週間が空しく過ぎていきました。
ちょうど一週間目の夜明け方、母親がわが子のの夢を見ました。「私が家の
入り口に眠っていると白い着物を着た美しい女の人が 『あなたは下界の人
間ではない』といって私を神様のところへ連れて行きました。 私はこちらで
楽しく過ごしていますから、どうぞお父様もお母様も幸福に暮らして下さい。
そして正月の二日の夜中には雨氣岳から赤田松の頂上まで、綺麗な提灯
が列をつくって並びますから、それを私と思って見て下さい」と。
翌朝さっそく夫にそのことを話すと、夫は「それでは正月の二日まで待つこと
にしよう、そして、それが本当だったならあの子は神の子として諦めなけれ
ばならない」と云い、正月を待っていました。 やがてその日がやって来ま
した。 そして夜の二時ごろとうとうあの夢が実現されたのです。 夫婦はあ
まりの驚きに我を忘れてその光景に見入っていました。 そしてあの子は神
様の子であったと諦めたのでした。

             松村大吾さん(徳之島町山)の「山集落に伝わる民話・伝説」より転載